Pulseket の「アーキタイプ」はどうやって選手を分類しているのか
Pulseket では、選手の特徴をスタッツで分類しています。大きく5つの「カテゴリ」に分け、その中をさらに細かい「アーキタイプ」に分けています。全部で次の10種類です。
- ハンドラー(ボールを運んでゲームを作る)
- Shot Creator:自分で攻撃を作って自分で仕留める司令塔
- 2nd Ball Handler:エースの隣で配球を担うセカンドの運び役
- アタッカー(フィニッシュで違いを作る)
- Volume Scorer:自分でこじ開けて大量得点する得点源
- Slasher:ドライブでリムを攻め、ファウルをもらう
- Athletic Finisher:もらって上で決めるアスレチックな仕上げ役
- シューター
- Spot-Up Shooter:もらって3Pを沈めるスペーサー
- ビッグ(インサイドを支配する)
- Roll & Cut Big:もらってゴール下で決めるフィニッシャー
- Stretch Big:外から3Pを撃てる大型
- Post Scorer:ポストで自分から仕掛けて得点を作る
- コネクター
- Connector:自分では使わずボールをつなぐ潤滑油
これらは誰かが印象で決めているわけではなく、その選手のスタッツから計算で導いています。この記事では、何の数字を見て、どう分けているのかを、実在選手が実際にどこにいるのかを図と計算式で示しながら説明します。前提知識はいりません。
得点だけ見てもアーキタイプは分かりません
「20点取る選手」と言っても中身はまるで違います。自分でドリブルでこじ開けて20点取る選手もいれば、味方のパスをもらって決めるだけで20点取る選手もいます。前者はチームの攻撃を作る中心で、後者は誰かが作った攻撃を仕上げる役です。役割としては正反対と言っていいでしょう。
つまり大事なのは「何点取ったか」ではなく「どうやって取っているか」です。Pulseket のアーキタイプは、この「どうやって」をスタッツで捉えようとしています。
「どうやって」を測る数字
アーキタイプ判定には、次のような指標を使っています。どれも1つの数字で「プレースタイルの向き」を表すものです。
- USG%:その選手がチームの攻撃をどれだけ使っているか(攻撃の中心度)
- AST/TO:アシスト÷ターンオーバー。ボールを預けて配れる選手ほど高い
- 被アシスト率:自分の得点のうち「味方のアシストから決めた」割合。低いほど自分で作っている、高いほどもらって決めている
- 3PAr:シュートに占める3P試投の割合(外向きか中向きか)
- リム率:得点に占めるゴール下の割合(インサイド依存度)
- FTr:フリースローをどれだけ獲得しているか(ドライブして当たりにいく強さ)
- REB%:出場時間あたりのリバウンド量(サイズの代理)
- 速攻比率・こぼれ球比率・ダンク/レイアップ比率:シュートがどんな場面で生まれたか(速攻・セカンドチャンス・ゴール下のフィニッシュ)
このうち一番の主役が被アシスト率です。冒頭の「自分で作る20点」と「もらって決める20点」を分けるのが、まさにこの数字になります。
数字は「リーグで上から何%か」に直します
生の数字をそのまま比べても意味がありません。3PArの「0.4」が高いのか低いのかは、リーグ全体を見ないと判断できないからです。
そこで Pulseket は各指標を、リーグの中で**上から何%か(百分位)**に直します。
- 百分位 90 = リーグ上位10%(その指標がとても高い)
- 百分位 50 = ちょうど真ん中
- 百分位 10 = リーグ下位10%(とても低い)
この記事の図の軸も、すべてこの百分位(0〜100)で描いています。「リーグの中でどのあたりか」で選手を並べている、と思ってください。
図で見る:ボールを持つ選手はこう分かれます
まず外の選手(ガード・ウイング)から見てみます。**横軸に被アシスト率、縦軸にUSG%**を取ると、実在選手はきれいに分かれます。
左上に集まっているのが自分で作るタイプです。カルバー・ニュービル・富樫は、被アシスト率が極端に低く(自分で作っている)、USGも高い。攻撃を自分で回して自分で仕上げる選手たちです。
右下に行くほど「もらって決める」側になります。細川一輝は被アシスト率96、つまりほぼ全部お膳立てからの得点で、USGは低い。典型的なスポットアップシューターです。馬場雄大はさらに右下、USGは低いのに被アシスト率100で、自分では使わずボールをつないでいくConnectorの位置にいます。
右下には細川・藤井(シューター)と馬場・熊谷(つなぎ役)が近い場所にいます。この2つは「もらって決める」点では同じで、3Pを多く撃つか(シューター)配球でつなぐか(つなぎ役)で分かれます。色で見分けてください。
同じ「得点する選手」でも、この図の左上にいるか右下にいるかでアーキタイプがまるで変わります。これが「被アシスト率が主役」という意味です。
図で見る:ビッグマンの中の違い
次はインサイドの選手です。ビッグは全員「背が高くてゴール下にいる」で終わりがちですが、中身は3つに分かれます。**横軸に3PAr(外を撃つか)、縦軸に被アシスト率(自分で作るか)**を取ります。
右側に離れているのがストレッチビッグです。エドワーズ・ヒースは3PArが高く、ビッグなのに外から撃つ。他のビッグとは横軸で完全に分かれています。
問題は左側です。パードンもガードナーも3PArは低く「中で勝負するビッグ」ですが、縦軸(被アシスト率)で上下に分かれます。
- 上(Roll & Cut):ジェイコブセン・パードンは被アシスト率が高い。味方のパスやこぼれ球をもらってゴール下で決めるフィニッシャーです
- 下(Post Scorer):ガードナー・ヴィックロー・イングリスは被アシスト率が極端に低い。ポストで自分から仕掛けて得点を作ります
見た目には同じ「点を取るビッグ」でも、もらって決めているのか自分で作っているのかで役割は別物になります。ここでも被アシスト率が効いています。
計算式をすべて公開します
図では2つの軸で説明しましたが、実際の判定はもっと多くの指標を同時に見ています。仕組みはシンプルで、アーキタイプごとに「こういう数字が高い/低いほどこの役割らしい」という重みを決めておき、選手の数字に掛けて合計するだけです。
式の中の z(指標) は、その指標が「リーグ平均から標準偏差いくつ分ぶん離れているか」を表す値です。図で使った百分位と意味は同じで、リーグの中で高ければプラス、低ければマイナスになります。**重みがプラスなら「高いほどその役割らしい」、マイナスなら「低いほどその役割らしい」**という意味です。
10個のアーキタイプの式は、次のとおりです。
ハンドラー
Shot Creator = 0.40·z(USG) + 0.30·z(AST/TO) − 0.30·z(被アシスト率)
2nd Ball Handler = 0.50·z(AST/TO) + 0.15·z(USG) − 0.35·z(被アシスト率)
アタッカー
Volume Scorer = 0.45·z(USG) − 0.30·z(AST/TO) − 0.25·z(被アシスト率)
Slasher = 0.25·z(リム率) + 0.35·z(FTr) + 0.22·z(速攻比率)
− 0.10·z(3PAr) − 0.15·z(被アシスト率)
Athletic Finisher = 0.30·z(ダンク/レイアップ比率) + 0.30·z(被アシスト率)
+ 0.25·z(速攻比率) + 0.15·z(リム率)
シューター
Spot-Up Shooter = 0.50·z(3PAr) + 0.35·z(被アシスト率) − 0.15·z(USG)
ビッグ
Roll & Cut Big = 0.25·z(リム率) + 0.20·z(OR%) + 0.25·z(REB%)
+ 0.20·z(こぼれ球比率) + 0.05·z(被アシスト率) − 0.15·z(3PAr)
Stretch Big = 0.45·z(3PAr) + 0.40·z(REB%) + 0.15·z(被アシスト率)
Post Scorer = 0.25·z(USG) + 0.40·z(REB%) − 0.15·z(3PAr)
− 0.22·z(速攻比率) − 0.10·z(被アシスト率)
コネクター
Connector = 0.45·z(AST/TO) − 0.35·z(USG) + 0.20·z(被アシスト率)
10個すべてでこのスコアを出し、一番点が高かった役割を主役割として付けます。だから全員に必ず1つ役割が付き、エースだからといって全アーキタイプに該当することもありません。
そして「そのスコアがリーグで上から何%か」を fit(適合度) として出します。fitが高いほど、そのアーキタイプの中でも突出しているという意味になります。
Volume Scorer だけの追加条件
Volume Scorer は「USGが高い・AST/TOが低い・被アシスト率が低い」を追いかけますが、これだけだと実際には大量得点していない選手まで拾ってしまいます。そこでこの役割だけは、次の3つをすべて満たした選手だけを候補にしています。
- 1試合平均得点がリーグ上位30%以上(実際に大量得点している)
- 被アシスト率がリーグ下位45%以下(自分で作っている)
- AST/TOがリーグ下位50%以下(配球型ではない)
決まっていく手順を、動かして見てみましょう
ひとつ先にお伝えしておきます。この判定は「ビッグか?→はい/いいえ」と枝分かれしていくフローチャートではありません。10個の型を同時に採点して、一番点が高いものを選ぶ方式です。だから「順番に質問に答えて絞り込む」のではなく、次の4つの手順が一気に進みます。
- ① スタッツを入れる(リーグ内の高さ=百分位)
- ② リーグ平均からの差(z)に直す
- ③ 10の型それぞれで採点する(重み × z の合計)
- ④ 一番高い型に決定し、その型の決め手2スタッツで位置を見る
下の図はこの4手順をそのまま並べたものです。スライダーを動かすと、②の差、③の採点とランキング、④の判定と散布図が、すべてその場で変わります。
散布図の軸は、いまの主役割の決め手(USG%・AST/TO)に 自動で切り替わります。型が変わると土俵も変わります。
たとえば USG を上げて被アシスト率を下げると Shot Creator に、逆に USG を下げて被アシスト率を上げると Spot-Up Shooter や Connector に寄っていきます。3PAr と REB% を上げれば Stretch Big に近づきます。④の散布図の軸は、そのとき選ばれた型の「決め手」に自動で切り替わるので、型ごとに見るべきスタッツが違うことも分かります。
まとめ
Pulseket のアーキタイプは、こうやって決まっています。
- 「何点取ったか」ではなく「どうやって取っているか」をスタッツで測る
- すべてリーグの中で上から何%かに直して、高い低いを公平に比べる
- とくに被アシスト率が「自分で作る/もらって決める」を分ける主役になる
- 複数の指標に重みを掛けてスコアにし、一番点が高い役割を主役割にする
図で見たとおり、同じ「得点する選手」でも位置がまるで違います。その位置こそが、その選手のアーキタイプを決めています。