Bリーグの笛は何が違うのか・パート2。ファウル8万7千件を種類と場所で分けたら、ユーロリーグと違うのは1種類だけでした
これはパート1:Bリーグの笛は重いのか。NBA・ユーロリーグ・EASLと2,432試合で徹底検証してみたの続きです。パート1を読んでいなくても追えるように書いています。
パート1で数えたのは量でした。ペイントをどれだけ攻めたかで割ると、B1はNBAより35%多く吹かれていて、ユーロリーグとの差は検出されませんでした。ただしそこで分かったのは総数だけで、その中身がどうなっているのかは分かりませんでした。
この記事では中身を見ます。ファウル1件ごとに、コートのどこで起きたかと、シュートに対するものだったかを分けて数えます。
この記事の立場
どちらの味方もしません。
「笛が重い」と言う人と、「データで見れば普通だ」と言う人が、ずっとすれ違っています。この記事はどちらかを言い負かすためのものではなく、2つの言い分が両立しうるのかを確かめるためのものです。
先に扱える範囲を書いておきます。
| 扱い | |
|---|---|
| 宣告されたファウルの数・種類・場所 | 数えます |
| 接触そのもの(何回あったか・どのくらい強かったか) | 数えられません。どのリーグも記録していません |
| なぜそう言われているのか(SNS・世論の側) | 測っていません。この記事が見るのはコート上で起きたことだけです |
対象は2025-26レギュラーシーズンです。ファウルを1件ずつ数えたのは B1(28,436件・780試合)、NBA(44,297件・1,230試合)、ユーロリーグ(14,260件・380試合)の3リーグで、合計87,000件弱になります。EASL(42試合)は公式の集計値だけを使うので、後半の2か所にだけ出てきます。
結論だけ読みたい方はこちらへ。
使えるデータと、この記事の進み方
リーグごとに、取れるものが違います
比較の順番はこちらの好みではなく、データの都合で決まっています。 先に何が取れて何が取れないかを出しておきます。
| ファウルの位置 | シュートへのファウルかどうか | 与えたフリースローの本数 | 試合単位 | |
|---|---|---|---|---|
| B1 | ✅ ゾーン番号と座標 | ✅ テキストに明記 | ✅ | ✅ |
| NBA | ✅ 座標(ただしハーフラインまで) | ✅ 種類名 Shooting Foul | ✅ | ✅ |
| ユーロリーグ | ❌ ありません | ❌ ありません | △ 復元できます | ✅ |
| EASL | ❌ | ❌ | ✅ 集計値のみ | ❌ シーズン集計だけ |
ここから、できることが決まります。
- ファウルの位置で分けられるのは、B1とNBAだけです。 ユーロリーグとEASLのプレー・バイ・プレーには位置情報がありません
- シュートへのファウルかどうかで分けられるのも、B1とNBAだけです。 ただしユーロリーグは、1つのファウルで相手に与えたフリースローの本数から代わりの数字を作れます(③でやります)
- EASLはシーズン集計しか取れません。 試合ごとの数字が無いので、精度は大きく落ちます
だからこの順番で進みます
位置で分けられる相手がNBAしかいないので、まずNBAと比べます。 ですがNBAは、ハンドチェックの禁止やディフェンシブ3秒などルールそのものが違うリーグです。だからNBAとの比較だけでは終われません。同じFIBAルールのユーロリーグで確かめ直す必要があります。
| 段 | 何をするか | 比べる相手 | 使うもの | この段で分かること |
|---|---|---|---|---|
| ① | ファウルの中身を、割合ではなく率で見る | NBA・ユーロリーグ | 種類 + シュート数 | 「どこでも一様に吹かない」が成り立つのかどうか |
| ② | その差がコートのどこにあるか | NBA | 位置 + 種類 | その差がルールの違いで説明できそうか |
| ③ | 同じルールのリーグで確かめ直す | ユーロリーグ | フリースロー本数 | ①②で見えたものがBリーグのものか、FIBA全体のものか |
| ④ | 残った違いを1つずつ追う | ユーロリーグ | フリースロー本数 | Bリーグだけの違いが残るのかどうか |
| ⑤ | 同じ性質の判定を探す | ユーロリーグ・EASL | 集計値 | その違いがたまたま1つなのか、筋が通っているのか |
| ⑥ | 選手とチームを固定する | EASL(同じクラブ) | 集計値 | 違いが審判の側にあるのか、選手とチームの側にあるのか |
③が、この記事のいちばん大事な段です。 ①と②で見つかるものが「Bリーグの笛」なのか「FIBAとNBAの違い」なのかは、③にたどり着くまで分かりません。NBAとの比較だけで話を終わらせると、ここで間違えます。
そして⑥まで行っても、最後に1つだけ残るものがあります。
6段のぜんぶを終えても分からないこと
接触そのものです。 何回あって、どのくらい強かったのかを、どのリーグも記録していません。
これが意味するのは、「吹かれた回数が少ない」と「そもそもそういう場面が少ない」を、最後まで区別できないということです。たとえばB1で危ない当たりが実際に少なければ、重い判定が少ないのは当たり前で、笛の話ではなくなります。
この線はこの記事では越えられません。 ただしシュートに限れば、機会のほうは数えられます。 シュートは1本残らず記録されていて、シュートへのファウルはシュートなしには起きないからです。①はここを使います。接触の数そのものには最後まで届きませんが、「どこでも一様に吹かない」という形の説明が成り立つかどうかまでは確かめられます。
段階が上がるたびに、答えがどう変わるかを追ってください。
① 割合ではなく、率で見ます
まず、吹かれたファウルのうちシュートに対するものがどれだけあるかを数えます。B1は公式のプレー・バイ・プレーに「シュートファウル」と書かれていて、NBAは Shooting Foul という種類名が付いています。
| シュートへのファウルの割合 | |
|---|---|
| B1 | 38.3%(10,892 / 28,436) |
| NBA | 57.2%(25,338 / 44,297) |
19ポイント違います。ここだけ見ると「B1はシュートに吹かないリーグだ」と言いたくなります。
ですがこの数字は、割合であって率ではありません。 分母が「吹かれたファウル」なので、ファウルの総数が動くと、中身が変わらなくても割合が動きます。
実際にB1の26チームを並べると、ファウルを多く取られるチームほど、シュートファウルの割合が低くなります。 1試合あたりのファウルが1本増えるごとに、割合は0.91ポイント下がります(相関 −0.48・26チームのうち1チームを抜いても −0.55〜−0.39で符号は変わりません)。守備のスタイルの違いだけで、これだけ動きます。
だから割合では足りません。分母を、機会の数に替えます。
シュートなら、機会を数えられます
接触が何回あったかは、どのリーグも記録していません。ここは動かせません。
ですがシュートは1本残らず記録されていて、どこから打ったかも分かります。そしてシュートへのファウルは、シュートがなければ起きません。 だから「シュート1,000本あたり何回吹かれたか」なら、分母が揃います。
いちばん分母がぴったり噛むものから見ます。シュートが決まって、なおかつフリースローが1本つく形です。分母は、決まった2点シュートの数です。
決まったシュートを選んだのには理由があります。 シュートを外してファウルをもらうと、そのシュートは試投として記録されません。 B1のプレー・バイ・プレーから数えたシュートは102,091本で、ボックススコアの102,090本と1本しか違いません。つまりファウルで外れた7,728本は、どこにも試投として残っていません。決まったシュートだけが、分母が欠けない場所です。
| 決まった2点シュート1,000本あたり | |
|---|---|
| B1 | 97.6(3,038 / 31,137) |
| ユーロリーグ | 90.8(1,447 / 15,937) |
| NBA | 78.9(5,560 / 70,510) |
B1がいちばん多いです。 NBAの1.24倍、ユーロリーグの1.08倍で、どちらも誤差では説明できません(95%の範囲で、NBA比が1.18〜1.29倍、ユーロリーグ比が1.01〜1.14倍)。
シュートが決まったうえで接触があったとき、B1の審判はNBAよりもユーロリーグよりも吹いています。
シュート以外も数えました
ここまではシュート絡みだけです。「見逃されているのはシュート以外の接触のほうだ」という言い方が残るので、そちらも数えました。
シュート以外のファウルは、B1のほうが多く吹かれています。 NBAの1.3〜2.6倍で、どこでそうなるのかは②で見ます。同じFIBAルールのユーロリーグとは、ほぼ同じでした(③④で見ます)。
ここで消える説が1つあります
「B1の審判は接触を見ても吹かない」という言い方があります。もしそうなら、数えたどの数字も下がるはずです。
下がっていません。決まったシュートへの笛はNBAより多く、シュート以外はもっと多く吹かれています。「ぜんぶ飲み込んでいる」では、この並びは説明がつきません。
ここで消えない説もあります
接触そのものの数は、やはり分かりません。 決まった2点シュート1,000本のうち、何本に接触があったのかは、どのリーグも記録していません。「B1は決まったシュートへの接触が16%多いから、笛も16%多いだけだ」と言われたら、この記事では返せません。
言えるのはここまでです。「どこでも一様に吹かない」という形の説明は成り立ちません。 残るのは、場所やシュートの種類によって違うという形です。
そこを次に見ます。
② 差はリングから遠いところで生まれています
区切りをどこに置くか
B.LEAGUE公式のプレー・バイ・プレーには、ファウル1件ごとにコートのどのゾーンで起きたかが記録されています。ESPNのNBAプレー・バイ・プレーには座標が付いています。これをペイント内・ミドルレンジ・3Pラインの外・11mより遠く の4つに分けます。
点はB1で実際に吹かれたファウルの位置です(無作為に600件)。
11mで切る理由は、B1側の記録がそこで変わるからです。 ゾーン番号ごとに実際の距離を測ると、11m以内のゾーンは遠いほうの端が11.0m、その外側のゾーンは近いほうの端が11.7mで、11.0mと11.7mの間できれいに切れています。 偶然ではなく、記録の作りがそこで切れています。
ミドルレンジと3Pラインの外は、それぞれのリーグの3Pラインで分けています。 FIBAは6.75m、NBAは7.24mなので帯の広さが違います。分母もそれぞれのリーグの同じ帯からの試投なので比は作れますが、まったく同じ領域を見ているわけではありません。
割る前の確認
2つのリーグで、ゾーンの定義と数え落としがズレていないかを確かめました。
① B.LEAGUEのゾーン番号1・2がペイントに対応しています。 「2Pインサイドペイント」と記録されたシュート91,702件のうち、この2つのゾーンに入らなかったものは1件だけでした。NBA側は座標から、幅16フィート・ベースラインから19フィートの長方形で判定しています。
② 攻めている場所の構成が、2リーグでほとんど同じです。
| ペイント内 | ミドルレンジ | 3Pラインの外 | |
|---|---|---|---|
| B1 | 48.2%(49,083本) | 9.0%(9,111本) | 42.8%(43,585本) |
| NBA | 49.0%(105,011本) | 10.1%(21,552本) | 41.0%(87,864本) |
ペイントを攻める割合がほぼ同じなので、2つのゾーン定義はほぼ同じ広さの領域を指しています。
③ ファウルとフリースローの取りこぼしがないことも確かめました。 B1のプレー・バイ・プレーから集めたフリースロー本数の合計は27,353本で、公式ボックススコアの27,466本と0.41%しか違いません。後半で使うユーロリーグは、復元した15,052本が公式ボックススコアと完全に一致しました。
結果
場所と状況の2つで割った、全部の数字です。 縦が場所、横が状況で、ファウルは必ずどれか1つのマスに入ります。数字はすべて B1がNBAの何倍かで、幅は同じチームが何度も登場することを考慮したチーム単位のクラスタ・ブートストラップ(4,000回)で計算しました。
| 場所 \ 状況 | 決まったシュートへの笛 | 外したシュートへの笛 | シュート以外の接触 |
|---|---|---|---|
| ペイント内 | 1.26倍 ◎ 105.2 / 83.7 1.21〜1.31 | 0.85倍 ○ 316.2 / 374.2 0.82〜0.87 | 1.30倍 ✕ 4.13 / 3.17 1.21〜1.40 |
| ミドルレンジ | 0.71倍 ◎ 32.8 / 46.3 0.57〜0.87 | 0.62倍 ○ 100.7 / 162.4 0.56〜0.68 | 1.42倍 ✕ 3.15 / 2.22 1.32〜1.53 |
| 3Pラインの外 | 1.02倍 ◎ 7.8 / 7.7 0.82〜1.27 差は出ません | 0.86倍 ○ 14.0 / 16.2 0.76〜0.97 | 2.55倍 ✕ 4.60 / 1.81 2.34〜2.78 |
| 11mより遠く | 比べられません | 比べられません | 比べられません |
分母はマスごとに違います。左から順に、その場所で決まったシュート1,000本・その場所で外したシュート1,000本・100ポゼッションです。
どのマスなら「軽い・重い」を言えるか
記号は分母がどれだけ信用できるかを表しています。
| 分母 | 言えるか | 理由 | |
|---|---|---|---|
| ◎ | その場所で決まったシュート | 言えます | 決まったシュートは1本残らず記録されます。分母が欠けません |
| ○ | その場所で外したシュート | ほぼ言えます | ファウルで外したシュートは試投に記録されないので、分母が欠けています。欠けた分を戻すと比は0.02〜0.04ほど上がります(B1を低く見せすぎている側です) |
| ✕ | 100ポゼッション | 言えません | 1回の攻撃に接触が0回のことも5回のこともあります。量は分かりますが、接触に対する割合は出せません |
| 11mより遠く | — | 言えません | NBA側の座標がハーフラインで切れていて、記録が1件もありません。B1側には3,472件あります |
件数でいうと、「言える」のは28,436件のうち11,286件(39.7%)です。 残りの6割は、吹かれた数は数えられても、接触に対する割合は出せません。
表から読めること
いちばん右の列は下へいくほど増えます。 リングから離れるほど、シュートに対してではない接触が多く吹かれます(1.30 → 1.42 → 2.55倍)。3Pラインの外では、B1の4.60に対してNBAは1.81です。
ミドルレンジは、左の2つのマスが両方とも低く出ています。 0.71倍と0.62倍です。この2つは分子も分母もまったく別のものを数えているので、別々の数え方で同じ答えが出たことになります。
ペイント内は、左の2つで向きが逆になります。 決まったシュートにはB1の方が1.26倍多く吹き、外したシュートには0.85倍しか吹きません。同じ場所でも、シュートが入ったかどうかで逆を向きます。
そして、いちばん差が開くのはペリメーターです。 ここで思い出す必要があるのが、NBAは2004年にハンドチェックを禁止していることです。ペリメーターで手を使って相手を押さえる守り方が、NBAではそもそも反則です。3Pラインの外でシュート以外の接触が2.5倍になるのは、笛の違いではなくルールの違いかもしれません。
この比較では、NBAとの差はペリメーターで生まれていて、ルールの違いが疑わしい、という結論になります。
リーグ平均のマジックではありません
念のため、チーム単位でも確かめます。56チームそれぞれを並べました。
B1は右下、NBAは左上に分かれます。 シュート以外の接触が100ポゼッションあたり5.3件という線を引くと、B1は26チーム全部が右側、NBAは30チーム中29チームが左側に入ります(1チームだけB1側に混じります)。リーグ平均のマジックではありませんでした。
ただしこれも、守り方がリーグで違うという説明でまったく同じ形になります。
ついでに分かったこと:B1のファウルの1割強は、笛の話をするとき誰も思い浮かべない場所で起きています
比較から外した「11mより遠く」の帯ですが、B1側の数字だけなら言えます。
| B1 | |
|---|---|
| 守っているリングから14m以上離れて起きた守備ファウル | 12.4% |
| うちリングから23〜25m(=相手のバスケット付近) | 1,293件(4.5%) |
フルコートで当たりにいった場面、インバウンドへの圧力、終盤の意図的なファウルです。第1クォーターでも10.4%あるので、終盤のファウルゲームだけが理由ではありません。
「笛が重い」と言うとき、この1割強を思い浮かべている人はいないはずです。 それでも総量を数えるときには全部入っています。
なおNBA側はここを比較できません。 ESPNの座標は、守備ファウルについてはハーフラインで切れています。ハーフラインは座標でいう41.75の位置ですが、ファウルは40まで1フィートあたり100〜130件ずつまんべんなく記録されていて、42でゼロになります。自然に減ってゼロになる形ではありません。バックコートのファウルは、起きていないのではなく記録されていないと考えるのが自然です。
③ 同じルールのリーグと比べると、中身も同じでした
ここまでの比較相手はNBA1リーグだけでした。位置で分けられる相手が他にいなかったからです。そして②で、差がいちばん大きい場所がルールの違う領域だと分かりました。
ここからが本題です。 位置は捨てて、B1と同じFIBAルールのユーロリーグと中身だけを比べます。
「シュートファウル」の区別がないので、フリースローの本数で代わりにします
ユーロリーグのプレー・バイ・プレーには、シュートファウルかどうかの区別がありません。そこで1つのファウルで相手に与えたフリースローの本数を使います。
0本 → シュートに対してではないファウル(ボーナス前)
1本 → シュートが入ったうえでのファウル(バスケットカウント)
2本 → 2Pのシュートへのファウル、またはボーナス中のファウル
3本 → 3Pのシューターへのファウル
この代わりが使えるかどうかは、B1で確かめられます。 B1は本数もシュートファウルかどうかも両方記録されているからです。
| 与えたフリースロー | B1で「シュートファウル」と書かれていた割合 |
|---|---|
| 0本 | 0.1% |
| 1本 | 100.0% |
| 2本 | 65.2%(残りはボーナス中のファウル) |
| 3本 | 100.0% |
1本と3本は完全に、0本はほぼ完全に一致します。2本だけが混ざるので、そこは65.2%という実測の割合を当てはめます。
結果
| 与えたフリースロー | B1 | ユーロリーグ |
|---|---|---|
| 0本 | 48.0%(13,646) | 46.1%(6,568) |
| 1本 | 11.1%(3,159) | 10.7%(1,528) |
| 2本 | 39.5%(11,227) | 40.6%(5,785) |
| 3本 | 1.4%(404) | 2.7%(379) |
B1とユーロリーグの比は0.961倍(95%の範囲 0.930〜0.994)です。差は4%です。
吹かれる量も同じでした。1チーム1試合あたりの守備ファウルは、B1が18.23、ユーロリーグが18.76です。
この比較では、①で見たNBAとの19ポイント差はBリーグの性質ではなく、FIBAバスケットボールの性質だ、という結論になります。
①で割合を疑った理由が、ここで裏づけられます。19ポイントの差はBリーグの笛の話ではなく、FIBAとNBAの違いの話でした。②でペリメーターに差が集中していたことと、きれいにつながります。
④ 表の中で、1行だけ倍ちがいます
ここまでで、B1とユーロリーグは量も中身もほとんど同じでした。ただし上の表を見直すと、3本のところだけ1.4%対2.7%で倍近く違います。
3Pが外れてファウルを取ればフリースローは必ず3本になるので、これは3Pシューターへのファウルを数えていることになります。分母を3Pの試投数にすると、こうなります。
| 比 | 値 | 95%の範囲 |
|---|---|---|
| B1 / ユーロリーグ | 0.456倍 | 0.386 〜 0.547 |
| B1 / NBA | 0.896倍 | 0.765 〜 1.046 |
B1はユーロリーグの半分以下しか吹いていません。 ルールが同じで、量も中身も同じなのに、ここだけ半分です。
この比較では、同じルールの下でB1だけがシューターに笛を吹いていない、という結論になります。
⑤ 同じ性質のものが、他にもありました
3Pシューターへのファウルには、1つ特徴があります。審判が「このプレーはシュートだった」と認めないと出ないことです。ドリブルの途中で当たられたのか、シュート動作に入ってから当たられたのかを、審判が判断しています。
同じように審判が何かを認めないと出ない判定が、他にもあります。数えました。
危険な接触への格上げ
パート1でも扱いましたが、あのときは「ペイント内の試投1,000本あたり」で数えていました。分母の置き方に議論の余地があるので、分母を使わない形で確かめ直します。
格上げ率 = (アンスポーツマンライク + 退場) ÷ (パーソナルファウル + アンスポーツマンライク + 退場)
宣告された守備の接触ファウルのうち、重い判定に上げられた割合です。試投もポゼッションも使いません。
| アンスポ | 退場 | パーソナル | 格上げ率 | |
|---|---|---|---|---|
| EASL(42試合) | 26 | 0 | 1,463 | 1.746% |
| ユーロリーグ(380試合) | 175 | 3 | 14,260 | 1.233% |
| B1(780試合) | 196 | 2 | 28,436 | 0.691% |
B1はユーロリーグの0.561倍(95%の範囲 0.430〜0.729)、EASLの0.396倍です。分母を変えても、パート1と同じ結果になりました。
テクニカルファウル
比べるものがほしかったので、テクニカルファウルも数えました。これは予想していませんでした。
| テクニカル ÷ パーソナル | |
|---|---|
| ユーロリーグ | 1.452% |
| EASL | 1.299% |
| B1(選手のみ) | 0.570% |
| B1(コーチ・ベンチも入れる) | 0.942% |
ユーロリーグの記録にコーチやベンチの分が含まれているかどうかが分からないので幅で出しますが、どちらに振ってもB1が低くなります(0.39〜0.65倍)。
3つ並べます
| B1 / ユーロリーグ | |
|---|---|
| 吹く量(守備パーソナル/試合) | 0.97倍 |
| 中身(シュートへのファウルの割合) | 0.961倍 |
| 3Pシューターへのファウル | 0.456倍 |
| 危険な接触への格上げ | 0.561倍 |
| テクニカルファウル | 0.39〜0.65倍 |
上の2つは区別がつきません。下の3つは全部およそ半分です。
そして下の3つは、どれも審判が**「これは普通のファウルではない」と踏み込んで宣言しないと出ない判定**です。シュート動作だったと認める、接触が過度だったと認める、行為が不適切だったと認める。
この比較では、B1で少ないのは「普通ではない」と宣言する判定だけだ、という結論になります。
⑥ 選手を固定して、審判だけ替える
最後に、選手とチームを固定した比較をします。宇都宮ブレックス・アルバルク東京・琉球ゴールデンキングスの3クラブは、2025-26シーズンにB1とEASLの両方でプレーしました。EASLはFIBA公認の国際審判が笛を吹きます。
B1の180チーム試合と、EASLの25チーム試合を比べます。
| B1 | EASL | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 自分が犯したファウル/試合 | 17.99 | 17.88 | −0.6% |
| 自分が受けたファウル/試合 | 17.43 | 17.00 | −2.5% |
| ファウル1本あたりに与えたフリースロー | 0.947 | 1.114 | +17.7% |
| ファウル1本あたりに得たフリースロー | 1.048 | 1.017 | −3.0% |
吹かれる本数は、攻めているときも守っているときも動きませんでした。
いっぽう自分が犯したファウル1本あたりのフリースローは17.7%増えています。 これは「吹かれたファウルのうちシュートへのものの割合」が上がったことを意味します。3クラブとも同じ向きに動きました(宇都宮+16.8%、アルバルク東京+0.8%、琉球+35.5%)。
ですがこれは確定できません。 EASLは3クラブ・25チーム試合しかないので、95%の範囲は**−25.3%〜+60.8%**まで広がります。しかもEASLでは3クラブとも相手にペイントをより多く攻められていて、相手の攻め方の違いで説明する道も残ります。
この比較では、審判が替わっても吹かれる本数は変わらない、という結論になります。中身が変わるかどうかは、このサンプルでは決まりません。
結論
Bリーグの笛は、量でも中身でも、国際水準と区別がつきません。
同じFIBAルールのユーロリーグと比べると、1試合に吹かれる守備ファウルは0.97倍、そのうちシュートに対するものの割合は0.961倍です。どちらも差と言えるほどの違いではありません。
NBAとは中身が大きく違いますが、それはBリーグの笛の話ではありませんでした。 差はリングから遠いペリメーターに集中していて、そこはNBAがハンドチェックを禁止している領域です。ルールが違うリーグ同士を並べていたことになります。
違ったのは1種類だけです。
- 3Pシューターへのファウルは、ユーロリーグの0.456倍
- 危険な接触への格上げは、ユーロリーグの0.561倍
- テクニカルファウルは、ユーロリーグの0.39〜0.65倍
3つに共通しているのは、審判が「これは普通のファウルではない」と踏み込んで宣言しないと出ない判定だということです。普通の接触を吹く量と中身では、B1はユーロリーグと見分けがつきません。
「笛が重い」と言う人が見ているのは、おそらくこの1種類です。シューターに行ったのに取ってくれない、危ない当たりが軽い判定で済む。 「データで見れば普通だ」と言う人が見ているのは、総量です。 どちらも間違っていません。違うものを見ています。
この結論が言えていないこと
- 「宣告が少ない」と「そういう場面が少ない」を分けられません。 これがいちばん大きい弱点です。B1で危険な接触が実際に少なければ、格上げが少ないのは当然です
- テクニカルはとくに弱い材料です。 抗議や小競り合いの起きやすさ自体が、リーグの文化で違いえます
- 3Pシューターへのファウルだけは分母(3P試投)が揃いますが、クローズアウトの強さが違えば同じ数字になります
- 選手を固定した比較は3クラブ・25チーム試合しかなく、中身が動くかどうかを決められていません
- NBAとの差をルールの違いだと断定したわけではありません。 ハンドチェックの禁止だけでなく、ディフェンシブ3秒やスペーシングの違いも同時に効いていて、切り分けていません
この記事で測れていないこと
- 接触そのもの。回数も強さも、どのリーグも記録していません。この記事が数えたのは宣告されたファウルだけです
- バックコートの比較。B1には14m超のファウルが12.4%ありますが、ESPNのNBA座標はハーフラインで切れています
- ミドルレンジの帯の広さ。FIBAの3Pラインは6.75m、NBAは7.24mなので、同じ名前の帯が同じ領域を指していません
- ユーロリーグとEASLのゾーン別。プレー・バイ・プレーにファウルの位置情報がありません
- ユーロリーグのフリースロー復元の精度。ファウルの直後に続くフリースローを数える方式で、復元できたのは14,235本です。全体の15,052本との差はアンスポーツマンライクとテクニカルによるものと見ていますが、取り違えがゼロだとは確かめられていません
- 判定の正確さ。測ったのは場所と種類と回数だけです
- 経年。B1のプレー・バイ・プレーは2025-26の1季分です
データと出典
- B1:B.LEAGUE公式 のゲーム詳細ページに埋め込まれたプレー・バイ・プレー全780試合。ファウル1件ごとのゾーン番号・座標・与えたフリースロー本数・プレーテキストと、公式ボックススコアを使いました。プレー・バイ・プレーから集めたフリースロー27,353本は公式ボックススコアの27,466本と0.41%差
- NBA:ESPN のプレー・バイ・プレー1,230試合(取得した1,235試合からオールスター4試合とNBAカップ決勝1試合を除いたもの)。守備ファウル44,970件のうち、座標がコート範囲の外に出ていた673件(1.5%)を除いた44,297件を使いました。除いた673件は全部、リングとベースラインの間で起きたものです。同じ位置の他のファウルと同じ割合で各帯に割り振って戻すと、上の比は最大で2.7%動きます(2.545倍は2.486倍に、1.420倍は1.382倍になります)
- ユーロリーグ:EuroLeague Basketball公式 のPlayByPlay・Boxscore 全380試合。復元したフリースロー15,052本は公式ボックススコアと完全一致
- EASL:EASL公式スタッツ 全42試合
- ファウル判定の原則:JBA プレーコーリング・ガイドライン
- 誤差の幅はすべて、同じチームが何度も登場することを考慮したチーム単位のクラスタ・ブートストラップ(4,000回)で計算しました
- 集計はすべて筆者によるものです