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千葉ジェッツ2026-27のプレースタイルを、コヴァーチHCの言葉と去年の数字で読み解く

2026-27チーム分析千葉ジェッツ

千葉ジェッツの公式が、新ヘッドコーチのアドリアン・コヴァーチへのインタビューを公開しました(原文はこちら)。来日直後の車内で行われたもので、B.PREMIER初年度の2026-27シーズンに目指すバスケットについてかなり具体的に語っています。

この記事では、インタビューの文章を引用したうえで、それが数字の上で何を意味するのかを1つずつ確かめていきます。引用は原文のままで、その下に書くのはPulseketの読み解きです。どこまでがコヴァーチHCの発言で、どこからがこちらの解釈なのかが混ざらないようにしています。

ロスターそのものの話は別記事の千葉ジェッツ2026-27、新体制のロスターを数字で読み解くにまとめてあります。こちらは「駒は揃ったか」ではなく「その駒でこのプレースタイルが回るか」の話です。

先に結論

コヴァーチHCが語ったスタイルは、去年の千葉ジェッツとかなり違います。ペースは遅く(18位)、守備でボールを奪わない(スティール25位・相手TO率25位)——この3つはリーグでも下位でした。3Pの本数は平均並み(11位)です。すでにそろっているのは3Pの成功率(7位)だけです。

一方で去年の守備は強力でした。ただしその強さは「ボールを奪う守備」ではなく「シュートを入れさせない守備」(被eFG%リーグ1位)です。コヴァーチHCが目指す速いバスケに移ることは、去年リーグ1位だったこの守り方を作り替えることを含みます。

目指す形にいちばん近いのは、去年の長崎ヴェルカです。同じリーグに実例があるので、届かない目標ではありません。ただし1年でリーグの反対側まで動く挑戦になります。以下、1つずつ数字で見ていきます。

「リーグで最もテンポの速いチーム」

私たちが目指すのは、『このリーグで最もテンポの速いチーム』です。

まずここです。2025-26の千葉ジェッツのペースは1試合75.4ポゼッションで、26チーム中18位でした。リーグ平均が76.2なので、平均よりわずかに遅いチームです。帯グラフで見ると、赤い点はリーグ平均の点線より少し左、真ん中よりやや下位に位置しています。

ペース ― 1試合あたりポゼッション数
遅い速い
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。赤=千葉ジェッツ(18位/26チーム)

宣言どおりリーグ1位のペースになるには、1試合あたり4.5ポゼッション増やす必要があります。40分で4.5回ぶん多く攻めるということは、1ポゼッションあたりの時間を1.8秒ほど短くする計算です。数字にすると小さく見えますが、リーグ18位から1位への移動なので、攻め方の設計を変えないと届きません。

「アグレッシブなディフェンスから素早く切り替え」

アグレッシブなディフェンスから素早く切り替え、コート全体を広々と使ってプレッシャーをかけ続ける。

いちばん大きな飛躍が要るのがここです。ディフェンスから速攻につなげるには、相手のミスを誘ってボールを奪う場面が要ります。ところが2025-26の千葉ジェッツは、リーグで最もボールを奪わないチームの1つでした。スティールも、守備で相手に誘発したターンオーバーの率も、どちらも赤い点が右端(=最下位側)に張り付いています。

スティール ― 1試合あたり奪った回数
奪わない奪う
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。赤=千葉ジェッツ(25位/26チーム)
相手TO率 ― 守備で相手のミスを誘った割合
ミスを誘わないミスを誘う
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。相手の1ポゼッションあたりターンオーバー発生率。赤=千葉ジェッツ(25位/26チーム)

スティールは25位、相手のターンオーバー誘発も25位です。相手のミスから走り出す回数が、そもそもリーグでほぼ最下位でした。

去年の守備は「奪う」ではなく「入れさせない」型

ここで誤解のないように書いておくと、去年の千葉ジェッツの守備が弱かったわけではありません。むしろ逆で、守備効率はリーグ4位(1ポゼッションあたり失点101.5、リーグ平均は106.8)でした。

守備の中身が、コヴァーチHCの語るものと違っただけです。千葉の守備をリーグ内の順位で並べると、こうなります。

被eFG%
34.7%・シュートを最も入れさせなかった
リーグ1位
ブロック
3.67本
リーグ1位
守備効率
101.5
リーグ4位
相手TO率
12.8%
リーグ25位
スティール
5.6本
リーグ25位
2025-26・千葉ジェッツの守備指標のリーグ内順位(全26チーム)

被eFG%とブロックがどちらもリーグ1位です。つまり去年の千葉ジェッツは、リムの前に人を残して相手にシュートを打たせ、それを入れさせないことで守っていました。ボールを奪いにいかないのは弱点ではなく、そういう守り方を選んでいたからです。

そしてこの守り方は、速攻とは相性がよくありません。リムを守るためにビッグが下がっていれば、リバウンドは取れても速攻の枚数は足りません。相手のシュートが外れて自分たちがリバウンドを取る形は、相手ディフェンスが戻る時間を与えます。ボールを奪う形なら、相手が攻めた直後の無防備な瞬間から走り出せます。

コヴァーチHCが目指す形に移るということは、去年リーグ1位だったこの守り方を、程度の差はあれ作り替えることを含みます。ここが今季いちばんの見どころになりそうです。

「多くの高確率な3Pシュート」

そして多くの高確率な3Pシュートを沈めるスタイルです。

この文は「多く」と「高確率」の2つを言っています。分けて見ると、千葉ジェッツにすでにあるものと、足りていないものがはっきりします。まず本数(試投数)です。赤い点はリーグ平均のすぐ左、真ん中あたりにいます。

3P試投 ― 1試合あたり3Pを撃った本数
撃たない撃つ
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。赤=千葉ジェッツ(11位/26チーム)

次に成功率です。こちらは赤い点がリーグ平均より右、上位側にいます。

3P成功率 ― 撃った3Pが入った割合
低い高い
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。赤=千葉ジェッツ(7位/26チーム)

成功率はすでにリーグ7位で平均より上、足りないのは本数のほうです。1位の宇都宮ブレックスとは1試合あたり5.7本の差があります。つまり「高確率」の部分はもともと持っていて、「多く」の部分をこれから足すことになります。

継続組で見る、3Pの担い手

継続してロスターに残る選手が、去年どれくらい3Pを撃っていたかを36分あたりに換算して並べます。

富樫 勇樹
3P 33.8%
8.4本
金近 廉
3P 36.5%
7.1本
渡邊 雄太
3P 34.7%
6.2本
瀬川 琉久
3P 28.6%
3.3本
田代 直希
3P 39.4%
2.8本
原 修太
3P 33.6%
2.7本
2025-26・36分あたり3P試投数(カッコ内は3P成功率)

上の3人(富樫勇樹・金近廉・渡邊雄太)はすでに3Pを撃つ役割で使われていて、本数を増やす余地はそれほど大きくありません。一方で田代直希は3P成功率39.4%と継続組で最も高いのに、36分あたり2.8本しか撃っていません。原修太も出場22.9分に対して1試合1.7本です。

コヴァーチHCの言う「コート全体を広々と使って」を実行するなら、5人全員が3Pラインの外に立つ時間が増えます。すると田代や原のように、これまで撃たない役割だった選手の本数が増えることになります。本数の伸びしろは、すでに撃っている選手ではなく、この層にありそうです。

インサイドの3Pが0本という論点

今季加入するウィリアムス ニカは、2025-26に富山グラウジーズで59試合・平均21.9分に出場し、8.8得点・6.0リバウンドを記録しました。3P試投はシーズンを通して0本です。

これ自体が悪いという話ではありません。ゴール下で仕事をするタイプの選手です。ただ「コート全体を広々と使う」形では、味方のビッグが3Pラインの外に立てるかどうかでドライブのスペースが変わります。ニカが起用される時間帯のスペーシングをどう作るかは、今季のはっきりした論点になります。

目指す形にいちばん近い、去年の長崎ヴェルカ

ここまで見てきた5つの指標を並べると、ペース・スティール・相手TO率・3P(本数と成功率)のすべてで上位にいたチームが1つあります。長崎ヴェルカです。去年の千葉ジェッツとは、多くの指標で正反対の位置にいます。

カッコ内は26チーム中の順位です。

指標長崎ヴェルカ千葉ジェッツ
ペース79.9(富山と同率1位)75.4(18位)
スティール9.5本(1位)5.6本(25位)
相手TO率18.8%(1位)12.8%(25位)
3P試投33.1本(2位)28.6本(11位)
3P成功率37.3%(1位)35.1%(7位)

コヴァーチHCが語ったスタイルを数字に翻訳すると、去年の長崎の形にかなり近くなります。同じリーグの中に実例があるので、実現できない形ではありません。問題は、ペース・スティール・相手TO率の3項目で、去年の千葉ジェッツが長崎の反対側にいたことです(3Pの成功率だけは千葉も7位と上位でした)。1年でこの距離を詰めるという話になります。

プレッシャー守備の懸念、リバウンド

守備で前に出てボールを奪いにいくと、抜かれたときのカバーが遅れ、リバウンドの位置取りも崩れます。去年の千葉ジェッツは、この項目がもともと苦手でした。総リバウンドはリーグ4位(40.0本)なのに、相手に許したオフェンスリバウンドは24位の10.7本です。赤い点は右端(=許した本数が多い側)に寄っています。

被オフェンスリバウンド ― 相手に許したOR(少ないほど良い)
許さない許す
リーグ平均
2025-26レギュラーシーズン。1試合あたりに相手へ許したオフェンスリバウンド。赤=千葉ジェッツ(24位/26チーム)

リムを固める守り方でこの数字なので、前に出る守り方に変えたときにここがどうなるかは注意して見たいところです。しかもロスターの構成上、純粋なビッグはコステロとニカの2人です。この2人でファウルトラブルや疲労が出た場合、リバウンドの負担は渡邊雄太に集まります。

データにない新加入4人への期待

そのために必要な、完璧な補強ができたと自負しています。

補強が狙いどおりかどうかを数字で確かめようとすると、そこで止まります。ネイト・ウィリアムズ、マット・コステロ、菅野ブルース、ブランドン・ランドルフの4人は、2025-26のB.LEAGUEに出場記録がありません。海外や別カテゴリからの加入なので、Pulseketのデータでは去年の数字を比較できません。

一方、継続組の36分あたりスティール数を見ると、最も高い瀬川琉久で1.3本です。これはリーグの規定選手(出場300分以上・296人)の中央値1.2本をわずかに上回る程度で、瀬川自身は平均より上です。ただしリーグでスティールが持ち味の主力級は36分あたり2.2〜2.4本、最上位でも2.9本弱まで届きます。継続組で見ると、瀬川と渡邊雄太(1.1本)は平均並みに奪える一方、富樫勇樹・金近廉・原修太は0.6本前後とリーグ下位です。ボールを奪って一気に走る形の起点になる、突出したスティーラーは継続組にいません。

瀬川 琉久
1.3本
渡邊 雄太
1.1本
田代 直希
0.9本
金近 廉
0.6本
原 修太
0.6本
富樫 勇樹
0.6本
2025-26・36分あたりスティール数(継続組)。リーグ規定選手296人の中央値は1.2本

つまり、コヴァーチHCの言う「アグレッシブなディフェンス」を実際にコートで表現するのは、この新加入4人になる可能性が高いです。去年のBリーグにデータがないぶん未知数ですが、コヴァーチHCが「完璧な補強」と言い切ったのはこの4人を含めての手応えです。速いバスケの心臓部を任される彼らが、どんなスティールと走りを見せてくれるのか、いちばん楽しみにしています。

まとめ

  • コヴァーチHCが掲げる「リーグ最速・奪う守備・多くの3P」のうち、ペース(18位)・スティール(25位)・相手TO率(25位)の3点で去年の千葉ジェッツはリーグ下位でした。3Pの本数(11位)は平均並みです
  • ただし3Pの成功率(7位)はすでに持っていて、足りないのは本数のほうです
  • 去年の強力な守備は「奪う」ではなく「入れさせない」型(被eFG%リーグ1位)。転換はこの型の作り替えを伴います
  • 目指す形は去年の長崎ヴェルカに近く、同じリーグに実例がある一方、千葉は全項目で長崎の反対側にいました
  • 継続組にボールを奪う選手が少ないぶん、スタイル転換の鍵はデータのない新加入4人(ネイト・ウィリアムズ、マット・コステロ、菅野ブルース、ブランドン・ランドルフ)が握ります