宇都宮ブレックス2026-27を数字で分析:デ・ラファエレHCと「攻めるゾーン」
宇都宮ブレックスが2026年6月5日、2026-27シーズンのヘッドコーチにウォルター・デ・ラファエレの就任を発表しました(クラブ公式リリース)。イタリアのレイエ・ヴェネツィアを率いて2度のリーグ優勝とFIBAヨーロッパカップ優勝を果たした指揮官で、B.LEAGUE初のイタリア人ヘッドコーチになります。
この記事では、2024-25と2025-26の宇都宮ブレックスを数字で比べたうえで、デ・ラファエレHCが公の場で語ってきた内容と重ねます。OFFRTG・DEFRTG・NETRTGの3つはレーティングの解説記事でまとめてあるので、名前だけ見て意味が浮かばないときはそちらを先に読むと早いです。
集計はどちらのシーズンもレギュラーシーズン(各チームの最初の60試合)です。2024-25はB1の24チーム、2025-26はB.PREMIERの26チームを母集団にしています。ポストシーズンを含めると上位数チームの並びは入れ替わります。
先に結論
2025-26の宇都宮ブレックスは、OFFRTGをリーグ最上位に保ったまま、DEFRTGだけが落ちました。2024-25のリーグ2位(99.7)から12位(107.6)へ動いています。
落ちた中身は3つに分かれます。相手の2P成功率が49.7%(3位)から53.7%(14位)へ、相手のターンオーバーを誘発する率が15.1%(9位)から13.2%(21位)へ、スティールが6.97本(7位)から5.98本(22位)へ。一方で相手の3P成功率は31.6%(3位)から32.0%(5位)とほとんど動いていません。落ちたのはアウトサイドの守りではなく、リングに近いところの守りとボールを奪う部分です。
デ・ラファエレHCは英語のポッドキャストで、自分の守備を「オフェンスからの仕掛けを待たず、こちらから攻めにいくもの」という趣旨で説明しています。この考え方が向かう先は、宇都宮が去年いちばん落とした「ボールを奪う」部分と重なります。
ただし本人は就任会見で、選手に合ったバスケットを見つけていきたいという趣旨を語っています。イタリアで使っていた守り方をそのまま持ち込むと明言したわけではありません。以下、確認できることと確認できないことを1つずつ分けていきます。
2025-26に落ちたのは守備だけ
まず全体像です。宇都宮ブレックスは2024-25にレギュラーシーズンを48勝12敗で終え、チャンピオンシップを制して年間王者になりました。クラブとしては3度目、当時のリーグ最多優勝です。2025-26も45勝15敗で東地区を3連覇し、EASLでは初優勝を果たしています。
その2シーズンを、100ポゼッションあたりの得点(OFFRTG)と失点(DEFRTG)で並べます。
| 指標 | 2024-25 | 2025-26 |
|---|---|---|
| 勝敗 | 48勝12敗 | 45勝15敗 |
| OFFRTG | 113.8(2位/24) | 114.9(1位/26) |
| DEFRTG | 99.7(2位/24) | 107.6(12位/26) |
| NETRTG | +14.0(1位/24) | +7.3(7位/26) |
| PACE | 74.5(18位/24) | 74.6(22位/26) |
OFFRTGはむしろ上がっています。リーグ全体の得点効率も上がった年ですが、その中で順位を2位から1位へ動かしました。ただし1位といっても2位の群馬クレインサンダーズが114.86で、差は0.05しかありません。上位4チームが0.7の中にひしめいているので、「リーグトップの攻撃力を保った」くらいの読み方が実態に合っています。
動いたのはDEFRTGのほうで、7.9悪化し、順位は2位から12位に下がっています。
2025-26のDEFRTGをリーグ26チームの中に置くと、宇都宮の紺色の点はほぼ真ん中です。左端に1チームだけ離れているのが名古屋ダイヤモンドドルフィンズで、この年の守備は突出していました。26チームの並びはリーグのチームランキングでも見られます。
落ちたのは3P守備ではない
「守備が落ちた」と言うとき、中身がどこなのかで話がまったく変わります。宇都宮の守備指標を2シーズン並べると、落ちた項目と落ちていない項目がきれいに分かれます。
| 守備指標 | 2024-25 | 2025-26 |
|---|---|---|
| 相手2P成功率 | 49.7%(3位/24) | 53.7%(14位/26) |
| 相手3P成功率 | 31.6%(3位/24) | 32.0%(5位/26) |
| 被eFG% | 48.6%(3位/24) | 51.6%(8位/26) |
| 相手TO率 | 15.1%(9位/24) | 13.2%(21位/26) |
| スティール | 6.97本(7位/24) | 5.98本(22位/26) |
| 被OREB | 10.1本(20位/24) | 10.2本(20位/26) |
相手の3P成功率は31.6%から32.0%で、順位はむしろ3位から5位とほぼ同じ位置に残っています。1試合に許した3P試投も27.5本から27.7本でほとんど変わりません。アウトサイドの守りは去年も機能していました。
大きく動いたのは相手の2P成功率です。49.7%から53.7%へ4.0ポイント上がり、順位はリーグ3位から14位まで落ちました。相手が1試合に撃った2Pの本数は38.3本から38.6本でほぼ同じなので、本数を増やされたのではなく、同じ本数を高い確率で決められています。
被eFG%はこの記事では(2P成功数 + 1.5 × 3P成功数)÷ FG試投数で計算しています。2Pの確率が上がったぶん、こちらも48.6%から51.6%へ動きました。
そしてもう1つが、ボールを奪う部分です。相手TO率(相手の1ポゼッションあたりターンオーバー発生率)は15.1%から13.2%へ、順位は9位から21位へ落ちました。2025-26の位置をリーグの中で見ると、宇都宮の点は左端(=ミスを誘わない側)に近いところにあります。
スティールも同じ方向に動いています。6.97本から5.98本へ減り、順位は7位から22位です。この2つの指標が下位に沈んでいる点は、千葉ジェッツも同じでした。千葉は新HCが「アグレッシブなディフェンス」を掲げており、そのギャップはコヴァーチHC新体制の記事でまとめてあります。東地区の上位2チームが、そろって同じ方向の課題を抱えたまま新シーズンに入ります。
被OREBは10.1本から10.2本で、順位もどちらも20位です。これは2シーズンとも同じように苦手だった項目で、去年新しく悪くなったものではありません。
デ・ラファエレHCが語ってきたこと
ここからは新ヘッドコーチの言葉です。使うのは2つで、どちらも本人の発言として公開されています。
1つ目は、2023年8月にアメリカのコーチング向けポッドキャスト「Slappin' Glass」に出演したときのものです。この回のタイトルは「Walter De Raffaele on the 3-2 Matchup Zone」で、3-2マッチアップゾーンが主題になっています。
言葉が2つ重なっているので、先に分けて説明します。
3-2 は5人の並び方です。3人が3Pラインの外側(トップに1人、左右のウイングに1人ずつ)、残り2人がリング寄りに立ちます。Bリーグの中継でよく見る2-3ゾーンは逆で、2人が上、3人がベースライン沿いに並びます。同じ「ゾーン」でも、人数を厚く置く場所が上か下かで別物になります。
マッチアップゾーン は守り方のルールです。普通のゾーンは自分の担当エリアを守りますが、マッチアップゾーンは、自分のエリアに入ってきた相手を捕まえてそのままマンツーマンのように付いていきます(FIBAのコーチ向け教材にも1つの守備分類として載っています)。並びはゾーンなのに、相手から見ると人に付かれている状態になるため、相手はどちらの守り方をされているのか判別しづらくなります。
つまり3-2マッチアップゾーンは、上に3人を置いた並びのまま、入ってきた相手に人を付けていく守り方です。ここまでは戦術用語の説明で、宇都宮がこれを採用すると決まった話ではありません。
デ・ラファエレHCは同じ回で、自分の守備をこう説明しています。
my defense is a defense that don't want to wait. We don't want to wait the initiative from the offense, we want to attack the offense.
日本語に置き換えると、自分の守備は待つ守備ではなく、オフェンスからの仕掛けを待たずにこちらから攻めにいくもの、という趣旨です。同じ回で、ゾーンを相手の流れを断ち切るために使うこと、2-3ではなく3-2の並びを選んでガードに対応しやすくしていることも語っています。
Pulseketではこの記事の中で、この考え方を指す言葉として「攻めるゾーン」と書きます。これはこちらが付けた呼び方で、デ・ラファエレHC本人が日本語でそう言ったわけではありません。
2つ目は、就任会見での発言です。とちぎテレビの取材にこう答えています。
選手の立場に立って、チームに合ったバスケットを見つけていきたい。規律あるディフェンスから、フロアをかけめぐる全員で構築するオフェンスを目指す
読み方として大事なのは、ここで「3-2ゾーンを敷く」とは言っていない点です。むしろ選手に合ったバスケットを探すという言い方をしています。イタリアでの守り方をそのまま宇都宮に持ち込むかどうかは、この発言からは判断できません。開幕後の試合を見るまで分からない部分です。
一方で、守備を出発点にすること(規律あるディフェンスから)と、コートを走るオフェンスを置くことは、2つの発言で共通しています。
思想と数字が重なるところ、まだ分からないところ
デ・ラファエレHCの言葉と、去年の宇都宮の数字を並べると、3つに分かれます。
重なるところ。 「待たずに攻める守備」が向かう先は、相手にミスをさせてボールを取り上げる場面です。宇都宮が去年いちばん落としたのが、まさにその2項目(相手TO率21位・スティール22位)でした。伸ばす余地が最も大きい部分と、新HCが語ってきた方向が同じ向きを指しています。
重ならないところ。 去年最も悪化したのは相手の2P成功率(3位→14位)です。ゾーンに変えることでリング近くの守備が良くなるかどうかは、公開情報からは分かりません。ゾーンは中を厚くする形にも、外に人を出す形にもなり得ます。ここは現時点では判断できず、開幕後に確かめる項目になります。
そもそも別の論点。 被OREBは2シーズンとも20位でした。前に出て奪いにいく守備は、外れたシュートに対する位置取りが崩れやすくなります。もともと苦手だった項目なので、守り方が変わったときにどう出るかは注意して見たいところです。ただし「ゾーンだからリバウンドが悪くなる」と決まっているわけではなく、これも数字を見るまでは分かりません。
念のため書いておくと、「3-2ゾーンにすれば相手の3Pが減る」という話は、去年の宇都宮の数字からは出てきません。相手の3P成功率も試投数も、去年すでにリーグ上位で抑えられていました。良くする余地が小さい項目です。
ニュービルからケルへ、役割はどう変わるか
ロスターで最も大きな変化は、D.J・ニュービルの退団とトレイ・ケルの加入です。
ニュービルは2024-25と2025-26の2シーズン連続でリーグMVPに選ばれ、2025-26は59試合に出場して19.0得点・5.0リバウンド・リーグトップの6.4アシスト、3P成功率39.6%を記録しました(クラブの退団発表)。5月19日に契約満了での退団が発表されています。
ケルは7月7日に加入が発表されました。2025-26は富山グラウジーズで48試合に出場し、22.9得点・6.5リバウンド・4.5アシストです(クラブ公式リリース)。
2人の去年の数字を、同じ条件(各チームの最初の60試合)で並べます。1試合ごとの推移やほかの指標はニュービルの選手ページとケルの選手ページで見られます。
| 指標 | D.J・ニュービル(宇都宮) | トレイ・ケル(富山) |
|---|---|---|
| 出場試合 | 59 | 48 |
| 出場時間 | 31.1分 | 28.8分 |
| 得点 | 19.0 | 22.9 |
| リバウンド | 5.0 | 6.5 |
| アシスト | 6.4 | 4.5 |
| USG% | 26.2 | 32.6 |
| TS% | 65.0 | 61.4 |
| 3P試投/成功率 | 8.0本/39.6% | 6.2本/34.3% |
| 2P試投/成功率 | 4.7本/67.0% | 8.9本/53.1% |
| FT試投 | 4.3本 | 8.2本 |
| スティール | 1.19本 | 1.60本 |
| AST/TO | 2.56 | 1.87 |
得点だけを見るとケルのほうが多いのですが、中身がかなり違います。
ニュービルはFG試投の62.8%が3Pでした。3Pを8本撃って39.6%、残りの少ない2Pを67.0%で決める形です。TS%は65.0%で、USG% 26.2に対してこの効率は非常に高い水準です。加えてアシストがリーグトップの6.4本で、AST/TOも2.56ありました。得点も配球も1人で担いながら、ミスが少ないタイプです。
ケルはFG試投のうち3Pは41.1%で、2Pを8.9本撃っています。USG% 32.6はニュービルより6ポイント高く、その代わりTS%は61.4%です。特徴が出るのはフリースローで、1試合8.2本、36分あたりに換算すると10.3本になります。これは2025-26に300分以上出場した297人の中で最も多い数字です(中央値は2.27本)。相手の体に当たりにいって、ファウルを引き出して点を取るタイプと読めます。
守備側のスティールは、36分あたりでニュービル1.38本、ケル2.00本です。ケルは297人中24位で上位8%に入ります(ニュービルは95位、中央値は1.16本)。この手の選手同士の位置関係はリーグの選手ランキングで並べ替えて確かめられます。
まとめると、上背とリバウンドがあり、USG%が高く、リングに向かってファウルを引き出し、ボールも奪う選手が入ってきます。そのかわりに、3Pを高い確率で量産しながらリーグトップの配球をしていた選手が抜けます。「どちらが上か」ではなく、チームの中での役割が入れ替わると読むのが自然です。
なお、去年44試合で25.9分・12.6得点、36分あたり3P試投7.1本を撃っていたグラント・ジェレットも2026-27のロスターに名前がありません。宇都宮は2シーズン続けて1試合34本超の3Pを撃ってリーグ1位でしたが、その本数を支えていた2人が同時に抜けた形です。
継続組で3Pを撃っていた選手を、36分あたりの試投数で並べます。
遠藤祐亮・高島紳司・比江島慎・ギャビン・エドワーズは、去年すでに36分あたり5.7本以上を36%台以上の確率で撃っています。3Pの土台そのものは残っています。星川開聖は40.5%と継続組で最も高い成功率でしたが、出場が1試合7.5分でした。出場時間が伸びたときに同じ確率で撃てるかどうかは、まだ分からない部分です。
新加入では、ケルのほかにオーティス・フレイジャーⅢ、荒川颯、市岡ショーンが加わります。フレイジャーⅢは2025-26をイスラエルで過ごしており、B.LEAGUEでの数字がないため比較ができません。どんなプレーを見せてくれるかは開幕を待つことになります。
開幕後に見たい5つの数字
「本当に攻めるゾーンになったのか」を数字で確かめるなら、見る場所は絞れます。カッコ内は2025-26の値と26チーム中の順位です。
相手TO率(13.2%・21位)とスティール(5.98本・22位)。 デ・ラファエレHCが語ってきた「待たずに攻める」が形になるなら、まずこの2つが上がるはずです。逆にここが動かないままDEFRTGだけが良くなったなら、良くなった理由は別のところにあります。
相手2P成功率(53.7%・14位)。 去年いちばん落ちた項目です。ここが2024-25の水準(49.7%)に戻るかどうかで、DEFRTGの回復幅がほぼ決まります。
DEFRTG(107.6・12位)。 上の3つの結果として出てくる数字です。2024-25の99.7に近づくなら、宇都宮の守備は戻ったと言えます。
PACE(74.6・22位)。 会見では「フロアをかけめぐる」オフェンスに触れています。ボールを奪う回数が増えれば、その後に走る場面も増えるはずです。守備の変化が攻撃側にも出ているかを見る数字になります。
これらが一斉に動いたとしても、原因がゾーンなのか、選手が替わったからなのか、リーグ全体の傾向なのかは数字だけでは切り分けられません。それでも「変化が起きたかどうか」は、この5つを見れば分かります。いずれも宇都宮ブレックスのチームページとリーグのチームランキングで、シーズン中に更新されていく数字です。
まとめ
- 2025-26の宇都宮ブレックスはOFFRTGをリーグ最上位(114.9)に保ったまま、DEFRTGだけが2位(99.7)から12位(107.6)に落ちました
- 落ちたのは相手2P成功率(3位→14位)と、ボールを奪う部分(相手TO率9位→21位、スティール7位→22位)です。相手3P成功率は3位→5位でほとんど変わっていません
- デ・ラファエレHCは自分の守備を「オフェンスの仕掛けを待たず、こちらから攻めにいくもの」という趣旨で語ってきました。その方向は、宇都宮が去年いちばん落とした項目と重なります
- ただし就任会見では選手に合ったバスケットを探すという趣旨を語っており、3-2ゾーンを敷くとは言っていません。イタリアでの守り方をそのまま持ち込むかどうかは、現時点では判断できません
- ニュービルからケルへの入れ替わりは上下ではなく役割の違いです。3Pを8.0本・39.6%で撃ちながらリーグトップの6.4アシストを配る選手から、USG% 32.6でフリースロー36分あたり10.3本(リーグ最多)を獲りにいき、スティールも上位8%に入る選手に替わります